切っても切っても生えてくる
ヒドラという生物は実際にいる(4へぇ)。
最もギリシャ神話に出てくるような化け物じゃないけど。
ていうかあんなのがいたら大変だし。
いや、火炎放射器あるからそうでもない気がしてきた。
チェーンソーで斬ったところに火炎放射器。
最後にコンクリで固めて沈めりゃこっちの勝ちだろ。
冗談はさておき、切っても切っても死なない生物って言うのは
いろいろいるわけだけど、切ったところが生えてくる生物も
いろいろいる。
…人間もそうだったら便利なのに。
切れるというかちぎれるのはトカゲの尻尾。
実はアレは自分で切ってる訳だが。
これを自切という。
で、まあ切る目的はニンジャの変わり身の術みたいなもんで
敵の注意をそらすためにやってると。
そりゃ体食われるより尻尾食われるほうがましだもんな。
しかも生えてくるし。
でこのしっぽ、大体数ヶ月で生えるのだが必ず元通りになるわけ
ではない。いや、生えないって事じゃなくって。
時には尻尾が短く再生したり、二股に分かれたりする。
何でそんなことが起こるかというと、そもそも再生とはどうやって
起こるか考えてみると分かりやすいかもしれない。
実際には再生芽ってものが出来て再生するのだが、その一言で
片付けたら味気ないんでもうちっと突っ込んでみる。
ちょっとそのためにイモリの話をする必要があるな。
イモリも同じように足や尻尾を再生し、再生芽をつくる。
ところでこの再生芽、再生の段階によって分化、つまり足になるか
尻尾になるかなどが決まる。
複数の再生芽をつくって、それを相互に入れ替えるという実験がある。
初期段階ではきちんと再生したが、後期だと元の場所の組織が発生した。
つまり尻尾と足が入れ替わったイモリが出来ると。
両手両足がしっぽになって、尻尾に足が生えた悲惨なイモリも作れる。
トカゲの尻尾がきちんと再生しなかったのも、再生芽がきちんと
組織を作らなかったからである。尻尾二本は得した気分だけどな。
さて、この悲惨なイモリやトカゲのしっぽ、なんでちゃんとした尻尾に
ならなかったのか。
誘導形成。
生物というのは生まれてくる際に細胞が増殖したり、逆に
細胞が意図的に死んだり(これをアポトーシスという)することで
生まれてくるのだが、どの時期にどの細胞がどうなるかというのは
遺伝子レベルで調節されている。
で、再生というのはその生まれてくる際の状況を部分的に繰り返す
ことで始めて実現可能となる。これはどの生物でも一緒だ。
それが出来ない場合再生は不可能だ。
では出来る出来ないはどこで決まるのか?
細胞の分化度。
細胞の分化とは、体細胞が脳細胞や筋肉、臓器などの細胞に
なっていく機構のことである。
生物によって細胞の分化度は違っている。
プラナリアなんてのは半分に切ろうが生きてるわけで。
それは未分化の細胞をいっぱい抱えているからだ。
トカゲの尻尾なんてのも再生しやすいように出来ている。
逆にいうとそうでないなら再生できない。
未分化の細胞が十分ある場所でないと再生できないのだ。
人間が手足を失ったら再生できないのはこういうわけだが、しかし
現在胚性幹細胞など未分化の細胞を作る技術がいろいろ進歩している。
いずれは人間も、手足が無くっても再生できるようになる日が来る。
…ただなあ。手足が出来ても脳が追いつかないんだよなこれが。
たとえば乙武さんに手足つけても動かせないかもしれない。
脳が対応できないからだ。少なくともリハビリに相当時間がかかる。
その脳への情報もインストールして…いくらかかるんだ?
手足の再生は良いけど、それが不死化や延命に使われるのはちょっちな。
あとは機能追加とか。生やせばいいってもんじゃないだろ。
代償がどこに来るかなんて想像できないが、いいことだけと思えない…